第4章 【徳川家康】ちびっこシンドローム
「千花さん、これはあくまで俺の推測なんだけど」
「あ、うん!」
にやけていた顔をきりっと戻して、佐助君に向き直る。
佐助君は気にもとめない様子で、淡々と話を続けてくれる。
「小さい頃の家康様が、俺達同様ワームホールに巻き込まれてこの時代に飛ばされた、んだと思うんだ」
「えっ…でも、私達の時みたいに天気が悪くなったりとか、無かったよ…?」
「うん、ただ昔話でよく、『神隠し』って出てくるだろ?子供が突然姿を消す、っていう」
「あぁ…千となんとか、的な…?」
「まぁ平たく言うと、そんな感じ。そういう事象の正体が実はワームホールなんじゃないかって、俺は考えてる」
一気に難しくなってきそうな話に、思わず顔を顰めると。
佐助君は察してくれたようで、話をまきにかかった。
「つまり、過去の家康様が未来に来てしまったから。タイムパラドックス…矛盾が起きないように、今の家康様が時空間に吸い込まれてしまった状態なんじゃないかな」
「えっ…!それって、リアル家康はどうなっちゃうの!?」
「リアル家康様は、恐らく時空の狭間にいる状態。でも、ワームホールは時空の歪みを元に戻そうと動く筈だから、その内リアル家康様と入れ替えようとするタイミングがあるはず。それさえ逃さなければ、問題無い…筈、だ」
筈、の多さにびっくりしながら。
でも今、頼りは佐助君だけ…
リアル家康のいる、時空の狭間ってどんな所なんだろう、と不安になる――
「千花さん、これも、希望的観測に過ぎないんだけど。俺達は今、家康様が入れ替わった事を分かっている。ということは、過去の家康様…つまり子供の家康様はそのまま成長して、俺達の知っている家康様になる筈、なんだ」
「う、うん…?」
「うーん…言い切っていいのか、迷う所だけど。恐らく、元に戻るって信じていても大丈夫ってこと」
「そ、そっか…!」