第13章 【豊臣秀吉】一度限りの奇跡
急に何を仰るのだろう、と意図を掴めなくて首を傾げる私に。
秀吉様はいつも以上に、光り輝くような笑顔を浮かべた。
「今日はもう、仕事は上がりだろう?」
「うん、まあ、はい…そうですね」
本当はもうとっくに上がりです、と心の中で呟く。
含みのある質問、何かの予感にどきどきと、鼓動が走る──
「なら、一緒に茶でもどうだ?
今日のねぎらいに、一杯」
果たして、予感は的中して。
思ってもみないお誘いに、目を見開く。
私みたいな一介の下女が、武将様とお茶を飲むだなんて…
奇跡以外の何物でもない。
こうしてお話出来ているだけでも奇跡なのに、それ以上。
きっとこんな事は、二度とは無い──
「お前、そう言えば…聞きそびれていたが、名前は何て言うんだ?」
「は、はい!千花、です」
「千花。どうする?」