第13章 【豊臣秀吉】一度限りの奇跡
なんでも、あの美しい女人は打てど響かぬ三成様に業を煮やし。
秀吉様に助けを求め訪ねてきたのだ、と言う──
「彼奴の色恋の疎さには参ったもんだ。
一人前の男として、そろそろ嫁を娶っても良い頃なのにな」
「そ、そうだったのですね…?」
「あぁ。
俺の客人だと思ったのか、気を使わせて悪かったな」
秀吉様の言葉に、身の程知らずにもほっと安堵の息を漏らし。
思わず口元が綻んでしまう…そんな私を、じっと見つめている秀吉様の視線に気付き。
恥ずかしさに耐えかねて、気づけば寝転んだままだった姿勢をゆっくりと正した。
その間も、こちらをじっと…いや、視線を上下左右へとさ迷わせ、くまなく見られている。
「あ、あの…何でしょうか?」
視線に耐えかね、どぎまぎと口を開いた私に。
秀吉様は顎に手を添え、何か思案されるような格好のまま。
「…いや。
彼奴に、俺より先に嫁を娶るわけにいかない、と…
啖呵を切られたのを、思い出してな」
「…はあ…?」