第13章 【豊臣秀吉】一度限りの奇跡
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白い靄の中で、またあの人の後ろ姿を見た。
走って走って、近付けたと思えば遠ざかる。
伸ばした手は虚しく空を切り、力なく落ちる、そんな事を繰り返す悪夢。
果たして本当に、私がいるのは夢の中だろうか?
だってほら、あの人の隣にはまた黒髪の美女が現れて──
「秀吉さまっ…」
「…ん、目が覚めたか?」
夢から急に現に呼び戻されるように。
まるで考え無しな、明るい声が至近距離で聞こえて、思わぬ事に跳ね起きる。
急に頭を上げて、くらり、と血の足りない視界が眩む…
「こら、お前は倒れてたんだからな。
もう少し休め」
そして、状況を把握するより早く。
伸びてきた手と優しい声で、私は元の姿勢へと逆戻りした…