第13章 【豊臣秀吉】一度限りの奇跡
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「まぁ、本当に美味しいお茶」
「本当に、美味い…俺も吃驚しました」
「それに、あの花も見事ですわ」
「ああ、それも先程の女中が生けたものでして」
「まあ、それでは美への造形が深いのね。
練習でどうこうできるものでは、無いですもの」
「…ええ…全く、その通りですね」
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「…はぁっ、はあ…!!」
一刻も早く、あの場所から逃げ出したくて。
走って走って、気付けばあの庭先まで来ていた。
視線の先に陽炎が滲むほど暑い、走ったせいか汗がだらだらと流れ、顎の先から滴り落ちる程。
下を向き、はあはあと肩で息をする。
その内に立っていられなくなり、がくり、と膝をついた。
朝から動きっぱなしで、流石に疲れてしまったのだろうか。
その結果がこれなのだから、随分と神様仏様も容赦ない…
汗とも涙ともつかない水気で、視界がどろどろと溶けていく──