第13章 【豊臣秀吉】一度限りの奇跡
秀吉様が中から襖を開けて下さる。
垣間見た部屋の中には、長く揺蕩う艶やかな黒髪が美しい、女人が座っていた。
「早かったな、有難う。
あとは俺がやっておく」
秀吉様が私の手からお盆を取り上げ。
ゆっくりとまた、襖が閉められる──
あぁ、なんだ。
お客様って、女性だったのですか。
ならそうと早く言って頂ければ良かったのに。
思い切り熱くするとか、渋くするとか。
知っていたら、美味しくしようと張り切ることなんて無かった…!
──でも、そんな事をしてしまって恥をかくのは秀吉様だ、と。
自分の中の理性が主張する。
そう、間違った事などしていない。
元よりどうこうなろうだなんて、なれるだなんて、思っていなかったのだから──