第13章 【豊臣秀吉】一度限りの奇跡
「これは見事だ…
俺の部屋に誂えたようにぴったりだと思わないか?
本当に、有難うな!」
「いえ、そんな…!
お喜び頂けて、何よりです」
「それで…ついでに頼まれ事をしてくれないか?
勿論、手隙ならで良いんだが」
秀吉様がくしゃり、とした少年のような笑顔のまま、そんな風に言うのを断れるはずもなく。
内容を聞く前から食い気味で、勿論です、とお答えする。
「よかった。
今から、大事な客人が来る…
俺の分と合わせて、茶を二脚。
長い話になるだろうからお代わりも込みで、頼んだぞ」
秀吉様の命を違わぬよう、一言一句漏らさず聞こうと気持ちを落ちつけるも。
信頼してもらえてるんだ、大事なお客様にお出しするお茶を頼まれるなんて…!
勝手に周りをちょろちょろ動き回っているだけのつもりだったのに、思いがけない大出世に気が逸る──
「いいか?頼むな」
「はいっ、承知致しました!」