第13章 【豊臣秀吉】一度限りの奇跡
「おっと?お前は…」
「うわ、あ、あの、秀吉様っ…!!」
わたわたと慌てるも、重たい花器を持っていては踵を返すこともままならず。
怪訝そうな表情の秀吉様に、もうどうにでもなれ、と腹を括る。
「あのっ…先程は申し訳ありませんでした!」
「あぁ、あれは三成のヘマだからな。気に病むなよ」
「いえっ、あのっ、それで…
私、お掃除をしている時にお部屋の花が枯れかけているのを見留めまして…
差し出がましい真似とは存じますが、こちらを生けて参りましたっ…!」
おずおずと花器を差し出す。
秀吉様がじっと見定めるように視線を走らせたのを追いかけながら、まるで沙汰を待つようにどきどきと心の臓が痛む。
「これを、お前が…?」
「は、はい…あの、勿論お気に召さなければすぐにお下げ致します…」
「馬鹿を言うな!凄く良い出来じゃないか!」
「はっ!はい!!…はい?」
「誰かに生け花を習ったのか?」
「い、いえ…そのような事は…」
早速飾ろう、と。
秀吉様は私の手から重たい花器を容易く持ち上げ、床の間へと置いた。
私はと言えば、思わぬ所で手放しに褒めて頂けた事に、どぎまぎと俯く。