第13章 【豊臣秀吉】一度限りの奇跡
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朝から働き詰めで、流石に疲れていたにも関わらず。
思いついてからは早かった…蔵へと逆戻りし、一番どっしりと座りの良い花器と花鋏を手に取り。
畑へとまた小走りで引き返して、小振りだけど形の良い向日葵を一輪。
それから、立派に大葉を広げた桧扇を摘んだ。
井戸端で簡単に形を整え、桧扇の濃い緑に向日葵の黄色が映えるよう生けていく。
秀吉様がすっくと日に向かう立ち姿のように、雄々しく凛とした生け花が出来た、と自画自賛しながら。
形が崩れてしまわないよう、花器を持ち上げ慎重に彼の部屋へと歩く。
しかし、彼の部屋の前までいざ辿り着いてみると…そんな勢いも見る見るうちに萎んでしまった。
秀吉様は数寄者だと聞く…私の生けた花なんか。
うじうじと思い悩んでいたその時、がたり、と障子が開いた。