第13章 【豊臣秀吉】一度限りの奇跡
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「…さて、もう一周…!」
袂を括ってある襷を、キツめにギュッと締め直し。
秀吉様が政務をされるお部屋の、前の廊下で気合を入れ直して、また雑巾をかけ走る。
秀吉様のお部屋には、たくさんの人が訪れる。
武将様をはじめ、困り事を抱えた民草。
諸国の大名方も、信長様だけじゃなくて秀吉様に挨拶に来られているのをよく見かける。
汚れていては秀吉様の評判を落としかねない。
となれば、掃除も念入りになると言うものだ…!
「う、わあっ…!!」
「お、おい!大丈夫か!?」
聞き覚えのある声に、雑巾をかけ抜けてきた後ろを振り返る。
思い切り尻もちをついておられる…三成様と、それを心配げに見下ろす秀吉様が立っていた。
「いたた…」
「おいおい、滑って転ぶなんて鍛錬が足りないぞ。
ほら、手を貸せ」
腰をさすりながら、秀吉様の手を借りて立ち上がる三成様。
青ざめながら、足早に駆け寄る。