第12章 【徳川家康】Vampirism(ヴァンピリズム)
「えっ…!で、でも、」
「あんな熱烈な告白されたら、断れないでしょ」
彼女の手がカタカタと小刻みに震え、明らかに何かを我慢している様子に気付いていた。
俺だけだ、と嬉しいことを言ってくれたし、その言葉を信じたいけれど。
先ほどみたいに抑えが効かなくて、別のヤツを襲ったりしちゃ困る…自ら制服のネクタイを解き、首元を寛げる。
そして、どうぞ、とだけ言い目を固く閉じた。
戸惑いの色を浮かべ、暫くその場に固まったままの千花。
ごくり、と喉を鳴らした音が、静まり返った部屋に響く。
「…あの、ごめんね、家康…」
はぁ、と千花は深く熱い息をついた――まるで、理性と本能の間のような。
謝らなくていいのに、と思いながら…しかし何か答えたら、また優しすぎるこの子の気を削いでしまうだろう、と簡単に予想がつく。
そこで只管黙ったまま、その時を待つ、けれど。
「ちょっと千花…そんな上の方を噛んだら襟口から丸見え。もう少し下」
「わ、わ、ごめんっ…!!」
歯を当てがおうと構えた、位置が生憎悪すぎた。
そこだけは譲れず、薄目を開けてチラリ、と睨む。
学校で下衆の勘ぐりにあって、からかわれては堪らない。
流石に口を出さずにはいれなかった…仕切り直し、とばかりにまた固く目を瞑る。
繰り返しのように、千花は俺の両肩に手を置き、息をついた。
触れ合った箇所から熱が、鼓動が伝わってくる――