第11章 【徳川家康】落ちると下りるは速度の違い(裏)
どちらからともなく、唇を重ね、身体を縺れさせている内。
いつの間にか、上下は逆転していた。
ふわふわと、酸素不足の頭とは切り離された所で。
別の生き物のように蠢く舌が水音を立てる。
共鳴して体内からぞわぞわと、沸き立つような感覚に身を震わせるけれど。
流石に空気が欲しくて、力の入らない拳で家康様の胸元をとんとん、と叩いた。
意地悪な舌はぐるり、と口内を抉るように蹂躙してから、音を立てて離れていく。
空いた隙間を繋ぐように、つぅ、と涎の糸を辿って。
途切れたところで漸く、思い切り息を吸った。
ぜぇぜぇと喘ぐような呼吸が気恥しくて顔を逸らす。
ざり、と畳が頬に擦れ、思わず顔をしかめた。
すると家康様は徐ろに、私の膝裏に手を差し入れ。
ぐい、と力を込めて持ち上げる。
「ひえ!?い、いえやすさまっ」
「…前から思ってたけど、たくみって見た目通り、恐ろしく軽いね。
あれだけ鍛錬しているんだから、もっと筋肉質で重たくてもおかしくないのに」