第11章 【徳川家康】落ちると下りるは速度の違い(裏)
家康様はそう言いながらずんずん歩いて、部屋の端に畳んで重ねてあった敷き布団を足で蹴散らした。
珍しく乱暴な振る舞いに驚く私の身を、今度は音も立たないほど丁寧に、布団の上に横たえる。
そして私の足の間に、身体を割入れるように跪いた。
目線の高さを合わせ、獰猛にも見えるほど、燃え滾るような熱を孕んだ瞳でこちらを見ている。
翡翠色の海の中に私がいるな、と思った瞬間、また唇に掠めるような口付けをひとつ落とされた。
そしてちゅ、ちゅと軽いリップ音を立てて瞼、頬、鼻の頭。
思わず身をよじった隙を見逃さず、耳朶にも。
「ふぁっ…!ん、う」
耳朶の端を啄むような口付けは、快感と擽ったさの間。
噛み締めた口元が弛んで声が漏れる、するとまた家康様は唇を重ね、開いた歯列の間に舌をねじ込み、絡ませる。
たまに息継ぎのタイミングなのか、一瞬唇が離れる度に漏れ出る声が恥ずかしい。
飲み込みきれない、どちらのものともわからない唾液が口の端からつぅっと垂れたところで、漸く家康様は身を離した。