第10章 【徳川家康】落ちると降りるは速度の違い
たくみが、自分の身を履い回る俺の手を、目で追いながら。
俺の意図を汲んだのか、じっと目を合わせると、にんまりと笑う。
「…ずっとこんな姿勢でいる、あんたが悪いよ」
「あちゃー、誘ってしまいましたか。
構いませんよ、こちらは前からお預けを喰らっていたのですから。
望むところっ」
「卑猥。嫌いじゃないけど」
「んー…家康様の事、家康様の中にいる、私の事…もっと深い所で、知りたくなりました。
…好きですから」
たくみの口元から、ちらり、と紅い舌が覗く。
今までの嬉しげな、幼子のような笑みとはまるで違う――蠱惑的な女のそれに、血が沸き立つ様な感覚が身を襲う。
「言ったね。幾らでも教えてあげる…
もう、離してやらないから」