第10章 【徳川家康】落ちると降りるは速度の違い
「…なら、手始めに。
信長様を説得しないとね…何とも、骨が折れそうだけど」
そう言いながら、家康様がふわり、と。
真っ赤に染めた頬を、笑顔を隠そうともせず、真っ直ぐにこちらを見詰めてくる。
本当に、好かれているのだと。
心から信じられる、伝えてくれる、その目。
「家康様ーーっっ!!」
「何…うっ、わ、たくみ!」
どん、と。
わざと音を立てる勢いで、飛びついた私を寸での所で受け止めた家康様と、一緒に床に転がり込む。
至近距離で見詰めあっても、逸らされない視線に。
気持ちが通じ合っている事を改めて自覚する。
「ちょっと。はしたないよ」
「そんな私でも、好いてくれているのでしょう?
嬉しい癖にっ」
「…まぁね。
好いた女に抱き着かれて、嬉しくない訳無い」
「ふふ。ノリノリだら…
家康様、いけるクチですねっ」