第10章 【徳川家康】落ちると降りるは速度の違い
ぞわり、と背が粟立つような感覚に、思わず身を抱えたくなる。
自分が持っている恋慕よりも、遥かに底知れない、深い情のようなものを感じて。
「…なんて、余裕ぶってはみたけど。
たくみの事、無理矢理にでも連れていきたいって思ってたのは事実だし。こうして囲って、その気にさせてやろう、なんて思ってた」
「そうでした。わたし、誘拐されたのでした」
「そのつもり、だったけど。
ひろやぬの、ちぃと話してるあんたを見てたら…さっき言った様な考えに変わった」
あいつらに感謝しなきゃね、と。
優しく笑う家康様に、心を揺さぶられる。
暖かくて、柔らかな未来が待っているのではないか、そんな想像を――
「彼女達も一緒に、駿府に行くのですか」
「勿論」
「それは…とっても魅力的。
ね、他に素敵なこと、ありますか」
「他に?」
「その気、にさせて下さいよ。
まだまだ、駿府の良いとこあるらぁ!」
「…欲深いね。
あんたの好きなあの海に、いつでも連れて行ってやれるってのはどう」
「…それ、最っ高!のったぁ!!」