第10章 【徳川家康】落ちると降りるは速度の違い
いけめんとな、と沸き立つ心を抑え、いそいそと客人の元に向かう。
後ろから楽しそうに着いてくるぬのちゃんとちぃちゃん…とは対照的な、半泣きのひろちゃんが玄関口で正座して、客人の対応をしていた。
そして私たちに気付き、ぱっと安堵の表情を浮かべる。
「たくみ様っ…あの、お客様がっ」
「お待たせしました、って…あぁ…
これはわかる、イケメンだわ、間違いないね」
「たくみ!元気で何よりだな!」
私を見て、にかっと音のつきそうな笑顔を浮かべている…客人というのは、太郎様だった。
「ふふ、怖くないよー!私の家族だから。お通ししてもいい?」
「たくみ様の御家族でしたか、これはとんだご無礼を…どうぞ、お上がり下さい!」
「あんた達、怖がらせちまったか。すまなかったな」
「いえ!そんな!」
「全く!ぜんぜん!」
ごゆっくりー、と現金だけれど空気の読める三人に見送られ。
太郎様と並んで自室へと向かう。
「太郎様も隅に置けないなぁ」
「ん?何の事だ」
「んふふ、女の子たちがいけめん、だって」
「そいつは嬉しいな。
…たくみもそう思ってくれてるんだろ?」
「もっちろん!
私が一番、太郎様のファンだら。
知ってたでしょ?」
「ふぁん、ね。勿論知ってたぞ、なんてな。
…やっばりそれが一番、嬉しい」
言葉通り、目を細め嬉しそうに笑う太郎様に、ぎゅっと胸を鷲掴みにされたような感覚が走る。
今更、彼の真っ直ぐな物言いに照れるなんて事、あるはずも無いけれど――