第10章 【徳川家康】落ちると降りるは速度の違い
「…ふぅ。嵐が去った後、みたい」
三人娘がぱたぱたとお膳を持って下がっていき、長い長い朝餉が終わった。
太陽の位置を確認すると、もう朝というより、昼に近い時間なんじゃないかと思われる…
白熱したガールズトークに疲労感すら感じながら、満腹のお腹をさすってごろり、と寝そべる。
この時代に来てからこんなにだらけた事、あったっけ?
あれだけ沢山寝た筈なのに、寝転んだそばからゆるゆると瞼が重くなっていく。
思考、というのは思いの外、カロリーを消費するらしい。
彼女達と楽しく話す間も、こうして微睡む間にも、頭の何処かにしっかりと居座る、彼の事――
とうとう瞼が閉じられようとした、その時。
どたどたと気忙しい足音が、こちらに向かってくるのに気付き。
重たい身体によいしょ、と声をかけて居直る。
「たくみ様ーーっ!!」
「失礼致しますっ」
「…えぇと、ぬのちゃん、ちぃちゃん…
慌ててどうしたの」
息を切らしてわたわたとするちぃちゃんと、その横で楽しそうに笑っているぬのちゃん。
全く違う二人の態度に、事態が予測出来ず首を傾げるしかない。
「す、すっごく大きくて!ちょっといかつい感じの!」
「殿方が、たくみ様はおられますか、と訪ねて来られましたけど…どうされますかぁ?」
「あ、おっきくて怖いけど…ね、ぬのちゃん」
「あ、わかるわかる!ね、ちぃちゃん」
「「いけめん、でした!!!」」