第10章 【徳川家康】落ちると降りるは速度の違い
にやけている、らしい私を見ながら、三人がにこにこと笑っている。
「たくみ様は、家康様の事が大好きなんですねー!」
「…あー、うん。
そうだ、ね…好きなんだ、ねー」
「わぁ、素敵ー!家康様やるぅ!」
「家康様…堅物過ぎると女子が近寄りませんよ、と申し上げていたのに…よかった…!」
この三人には隠し事が出来ないらしい、と悟った私は、その感情を認めるしかなかった。
いつの時代も女の子のパワーは変わらないんだな、なんておばちゃん目線になりながら、初めて口に出した好き、を噛み締める。
よもや本人より先に告げる事になるなんて、と思う反面。
本人に告げる気も無かった癖に、と自嘲する。
「…好感度アップキャンペーンに、まんまとしてやられた気分だら」
「それにしても、家康様がまさかおなごに好きだと言われる日が来るとはー!」
「ちぃちゃん、ひろちゃん覚えてる?前に顔だけで食いついて、無理やり見合いしたいって言ってきた何処ぞの姫様…
こてんぱんにやられて、泣いて帰ってたもんねぇ」
「あんな機会、もう無いと思ってました…故郷に報告すれば、さぞ皆喜ぶでしょうね」
故郷。
そうだった、と漂うほんわかムードの中、ぐっと拳を握る。
私と家康様は、冷戦中なんだった。
どうするか、から目をそらし続けている。
このままじゃ、誘拐されっぱなし――