第10章 【徳川家康】落ちると降りるは速度の違い
「たくみ様?」
覗き込む目に、声に、はっと我に返る。
見せ付けられた彼の一面に、頭の処理能力が追いつかないまま。
「殿様ってさ、こう…わしの舌に合わんものを作りおって!打首ーっ!みたいな…」
「ふふ、家康様に限ってそのような事は無さそうです」
「家康様がそんなんだったら…
もう私達何回か首斬られてるねぇ、ちぃちゃん」
「間違いないねー、ぬのちゃん」
三人の笑い声をBGMに、ほかほかと湯気を立てる白飯を口に運ぶ。
やはりそれも普通に美味しくて、満足感と一緒にまた思いが募って、積もる。
「…そう言えば、たくみ様。
鎧戸をお開けになってないのですね」
「あはは、なんだかそういう気分になれなくて」
「わぁ、それは勿体無い。今開けますねぇ」
…勿体無い?
その言葉に首をかしげる私を他所に、いそいそと鎧戸が開けられる…ぎぃぎぃとゆっくり、擦れる様な音を立てて。