第10章 【徳川家康】落ちると降りるは速度の違い
三人がきゃっきゃと笑いあうのに癒されながら、並んで部屋まで歩く。
屋内に入っても、彼女たちのテンションは変わらず。
女三人、寄ればかしまし…そんな言葉が浮かんでくる。
すれ違う使用人たちが、特にそれを咎める様子もない…
「三人は、いつも一緒に仕事しているのですか」
「そうですね…大概三人で行動してます」
「皆も分かってて、三人まとめて仕事を言い付けられる事も多いんですよぉ」
「そうなんですね…それはすっごく楽しそう」
彼なら規律を重んじて、びしっと統制の取れた感じを求めそうだな、なんて。
勝手なイメージが先行しているせいか、意外な事実が多すぎる。
「仕事は楽しい方が、うまくいくでしょー。
さぼりさえしなきゃ、それでいいんだよー。
って!家康様が!」
「…ちぃちゃん、それ、まさか家康様の真似?」
「バレたら怒られそうだねえ」
「ぬのちゃん、やっぱり怒られるかな…?
ひろちゃん、自信作だよー!
たくみ様、みんな、どうですかー?」
「ごめん。似てない」
「右に同じく。見事に似てないなー」
「ま、全く似てねぇー!!
似てないにも程があるだらっ」
けらけらと、すっかり打ち解け笑いあいながら。
家康様の、思いもよらない寛大さに気付かされて…
またじんわりと胸の底に、何かが溜まる。