第10章 【徳川家康】落ちると降りるは速度の違い
三人娘+家康様のやり取りを、何故か咄嗟に隠れた物陰で聞き。
そしてこそこそとそのまま切り抜け、また池の周回上に戻る。
「…家康様、ちゃんとお殿様してた」
妙な感慨めいた物が、胸中を巡り、底の方にぽつり、と積もった。
お城では見られない、彼が自分のテリトリーで、生活を営む姿…
もし、駿府に一緒に行ったなら――
もやもやと妄想が沸き起こりそうな所で、庭園の出口が見えてくる。
ぐるり、と回遊して元の場所へ。
同じ所をもう一周してもな、と、何ともなしに御殿へと戻る道すがら。
「あっ、たくみ様発見ーっ!」
「よかったぁ、お探ししておりました」
ぱたぱたと前から走ってくる、先ほどの三人娘。
自分が思考を巡らせながらゆっくり歩いている間に、既に掃除を終えて戻っていたらしい。
「たくみ様、朝餉の準備が出来ておりますのでお部屋にお戻りください」
「そうでしたか…わざわざありがとうございます」