第10章 【徳川家康】落ちると降りるは速度の違い
「わびさびを楽しむ…わびさび…
わさび…んふ」
「ちょ、ちょっとーーっ!!」
「ひぇ、つ、つい!
出来心で!
思いついたことを口に出してしまって…っ!」
聞こえてきた大声のツッコミに、誰にともなく言い訳してみるも。
ぐるーり、と大きく辺りを見渡すが、誰の姿も無いまま。
ひとまず声のした方へ、恐る恐る進んでいく――
「い、家康様ー!
掃除なら私達がやりますから!」
「そうそう、ちぃちゃんの言う通りですよー!
御殿の主がそんな事…ねぇ、ひろちゃん!」
「汚れてるのを綺麗にするのに、身分の上下は関係ないだろ。
俺が此処を掃除している間に、お前達が別の所掃除すれば効率がいいんだから」
「…なら、そうだ。ちぃちゃん、ぬのちゃん。
ずっとしたくて出来てなかった掃除場所があるの」
「そうそう、そういう所をやればいいんだよ…」
「あぁ、ずっと言ってた池の落葉さらいだよねー!
倉に入ってる馬鹿でかい竹箒で掻き集めるやつ!」
「わわ、あのホウキ使ったことないよ?
ちぃがやるー!がさーっと集め倒すーっ!!」
「ふふ、ちぃちゃん、池に落ちそうだね」
「わぁ、落ちたら笑ってあげるねー!」
「えー!そこは助けてー!!」
「…ちぃ、この箒と変わって。
ひろ、ぬの。
それは俺から男衆に声をかけてやっておく」
「そうなんですか?やりたかったのになぁ」
「残念だねー、ちぃちゃん」
「…ふふ、家康様、ありがとうございます!」
「…あんた達の連携に、上手いことしてやられたのは気のせいなの」