第10章 【徳川家康】落ちると降りるは速度の違い
いつも通りの頃合に、ぱちり、と目が覚める。
鎧戸の間から差し込んでくる朝の柔らかな光…昨日は夕陽が差し込んでいた、南向きの部屋なんだな、なんてぼんやりと考えながら。
薄明かりの中でもそもそと身支度を整える。
身一つで出てきたからどうなるものか、と思っていたけれど、いつの間にか枕元には丁寧に畳まれた小袖が置かれていた。
男女問わず着そうな、春を思わせる山吹色に、矢柄の小袖…家康様のかな、と思うと胸がざわつく。
さて、ここからどうするか?
掛け布団を片付けた布団の上で、胡座をかいて考える。
日がな一日、ぼーっと過ごすなんてらしくない…
「…よしっ、」
膝を叩き、気合を入れて立ち上がる。
空腹を逆に忘れるほど空っぽのお腹と、沢山寝すぎたせいか何かが抜け落ちた様に空っぽの頭。
何かでこの空白を、埋めたい――
「いざっ、探検に出発ー!!」