第10章 【徳川家康】落ちると降りるは速度の違い
ぺたぺたと、湿り気の残る足で音を立てながら歩く。
たくみは暫く黙って後ろを着いてきたが、しかし。
途中で足音が止まったのに、俺も振り返る。
何故、と問いたいのに、何を問えばいいか分からないのだと。
そう顔に書いてある気がした。
今、彼女が何を考えているか。
顔に出やすい彼女の事、その位はすぐに分かる、のに――
「…今日は、あんたを誘拐してきたんだ」
「…は?ゆうか、い…ですか」
「そう」
何を思っているかは、ずっと分からなくて。
…いや、本当は分かってるつもりだけれど、確証が欲しくて、こんな事になっている。
「…わーお、私、攫われ…た?
囚われの身?」
「そういう事だね」
「…その割には、自由の身…」
「縛り付けて欲しいの?」
「あ、それも興奮…んん、そうじゃなくて!」