第2章 【徳川家康】God BLESS you
秀秋と信長様の面通しも恙無く終わったその夜、俺と旧知の中だと言うことで持て成しの宴が始まった。
「…と、そこで家康殿が…」
「ええっ!何それ可愛い…ちびやす可愛い…!!」
「でしょう?家康殿は昔からお可愛らしいんですよ」
すっかり打ち解けたらしい二人、話の内容なんて知りたくもない。それを横目に、俺は秀秋の家老の山口と戦談義に花を咲かせる。昔馴染みとの会話は楽しく、そこに三成なんかも寄ってくる。普段は相容れないが、戦法についての話なんかはやはり薀蓄があり、聞いていて飽きない。
年始らしい華やかで楽しい時間が、刻刻と過ぎていく――
「…へえ、まだ何もしていない、と。家康殿もなかなかの初心ですね」
「…そうなの。まぁ、私がこんな雰囲気だから、なかなかそういう事しよう、って気にならないのかも!大事にしてくれてるんだろうな、って事はよくわかってるし…って何言ってるんだろ、こんな話…ごめんなさい」
「…いいえ、お幸せそうで何より。私も、旧友が幸せと聞き嬉しく思いますよ。でも…お寂しくはありませんか?」
「…え?」
「…もっと、家康殿に好かれたいと思いませんか?」
「そ、れは、」
「…私は、家康殿の事をよく存じております。千花様の、まだご存知ないことも、ね…?」
「あの、家康様」
「どうした、三成」
「千花様のお姿が、見えない気がするのですが…」
「彼奴、また呑みすぎたか。…厠かな」
「む、秀秋様もおられませんな…」
「…え、」
山口の言葉に、弾かれたようにあたりを見回す。確かに、二人の姿が見えない――胸がざわつく様な予感に、静かに立ち上がる。
「家康様、」
「三成、俺は広間を離れる。信長様に聞かれたら上手く言っておいて」
「…畏まりました」
「私もお供致します、徳川様」
「ああ…頼む」