• テキストサイズ

【イケメン戦国】短編集✲*゚

第10章 【徳川家康】落ちると降りるは速度の違い






ふんふん、と。
隣を歩く頭一つ…いや、二つ分、小さい彼女が調子の良い鼻歌を奏でる。
彼女の世の歌なのだろう、聞き慣れない旋律はしかし、すっと馴染みよく耳に溶けて流れ込む。



「…良い曲」



俺の微かな呟きをたくみは拾い上げ。
にっこりと微笑むと、今度は詞を声に上げ歌ってくれる。
知らない言葉も所々あるけれど、大体の意味は伝わってくる。




「恋の歌、ですよ家康様!

今の雰囲気にぴったり!…だら?」



小首をかしげて、そう俺に尋ねてくる彼女の真意を図ろうと。
じっと覗き込む、俺の視線を避けるように彼女は薄く笑い、少し俯き。


なーんちゃってね!
と、少し大きな声を上げ、繋がれた俺の手をきゅっと握った。






それ以上聞けない、俺も俺だけど――






まるで狐や狸の化かし合い。
笑い合うのに、奥底は見せずに、こんな所まで。




「ところで家康様、何処に行くんですー?」




ぱっと顔を上げ、話を変えるたくみに俺はため息をつく。
それは不満でもあり、安堵でもある。
しかし、調子を合わせるため…無理矢理ににやり、と笑った。




「秘密」



「…ひみつ?

イケメンと散歩、行先は秘密…それはそれは、期待が膨れ上がる!
たまりませんっ、家康様ー!!」



「…せいぜい、楽しみについておいでよ」






出来ればそのご期待に沿いたいもんだね、と。
心の中で自嘲しながら、ただ並んで歩くだけの逢瀬は続く――



/ 215ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp