• テキストサイズ

【イケメン戦国】短編集✲*゚

第10章 【徳川家康】落ちると降りるは速度の違い






春の舞う花弁を集める様に。


夏の入道雲の柱を飛び渡る様に。


秋の散りゆく落ち葉を避ける様に。


冬の霜柱をわざと探して踏む様に。







軽やかな様な、覚束無いような。
舞い踊るような、頼りない幼子のような。



少し前を歩く、彼女の足取りから目が離せずにいる。



先を歩く癖に、たまにこちらを振り返り。
大きな瞳で、見つめてくる。
ちゃんと主人がついてきているか、確認をする飼い犬の散歩のようだと小さく笑う、けれど…


俺の目とちらりと視線がかち合うと、またふわりと前を向き直る…それはまるで、気まぐれな猫の一人歩きのように。






「たくみ」







名前を呼ぶと漸く立ち止まり。
こちらを向き、んふふ、と不気味な笑い声を上げた。




「寂しくなりましたかぁ、家康様?」


「…まさか。

浮かれて歩くから、見てられなくなっただけ…ほら、手を貸しな」





はいっ、と。
やけに素直な良い返事と共に、小さな手を差し出され。


この散歩…彼女が言う所の逢瀬、を楽しんでくれているのだろう、と。
じんわりと、胸があたたかくなるのを感じながら、また歩き出す――




/ 215ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp