第3章 紺鼠(こんねず)
「おい。やめとけ謙信。
守りに入ったツラじゃないよ………全く……」
信玄の一言に謙信はふと我に返る。
「【ぱぱ】とは………
やんごとなく尊きものであるのであろう。
我、思い定めたり。
【ぱぱ】と言う名の元、尊き父となりてろきの子を見守ってゆく!」
庵の縁側にて、愛刀『姫鶴一文字』を左手に掲げ、キラキラした目で天を仰ぐ謙信の姿に、苦虫を嚙み潰したようなそれぞれの思いを胸に秘め、一気に力が抜けた信玄と佐助はがっくり肩を落とすと同時に、これ以上ない程のため息をふぅう~っと吐く。
(こいつがこうなったらもうダメだ……人の話なぞに聞き耳もたぬだろうなぁ………)
(謙信様に余計な事を言ってしまった……まさか【ぱぱ】に執着するとは……不覚……)