第2章 照柿(てりがき)
「やっぱダメだろき。
お前と腹の子に何かあったら、俺……」
「大丈夫」
「加減がわからねえ……」
「大丈夫」
「お前を失いたくねえんだよ……怖えんだ。
とにかく怖え」
「大丈夫」
幸村の不安を拭おうと、「大丈夫」を呪文のように繰り返しながら、頬を包んでいた手を離すと、目の前のがっしりした体躯を腕の中にふわりと抱きすくめた。
「幸村」
「……本当に……いい、のか?」
「うん」
私の胸に顔を埋めた幸村の頭を、子供をなだめるように何度も何度も撫でる。
気持ちが伝わったのか、私を見上げる幸村の目には狂おしい程の欲情が宿っていた。
「………ろき」
「うん」
「……動くぞ」
「うん………。っっ」
幸村の動きに合わせるかのように、時間もゆっくりと流れていく。
ひとつひとつの表情や仕草を目に焼き付けながら、お互いの体温を感じ交じり合える喜びに消え入るような声で幸村の名を呼んだ。
「ゆ……き、むら」
「体……キツかっ……たら言え……」
「ん……はぁっ」
今まで感じたことのない幸福感に包まれた私は、幸村の熱により言葉にならない悦楽の世界へと導かれて行く。
優しく揺さぶられながら私の意識は次第に霞んでいった。