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イケメン戦国 〜いにしへよりの物語〜

第1章 炎色(ほのおいろ)


私を抱き抱える幸村の横顔をちらり盗み見る。

暗い廊下に置かれた行灯の光に照らされてるせいか顔色が悪く疲れが滲んでるように見えた。

ただでさえ毎日忙しいのに、信玄様の事で胸を痛める幸村にこんな事で心配かけてる自分が情けなくなってきた。


ーー心配かけた上に怒らせてしまって……何やってんだろ私は。


「ごめん……幸村」


私の言葉に幸村は歩みを止める事なく、視線は真っ直ぐ廊下の奥に向けたまま低い声でぶっきらぼうに答える。


「いいから。大人しくしてろ」


余りの機嫌悪さに私はシュンとなり黙り込んだ。




部屋に入り、敷かれた褥の横に跪きいたわるように私を下ろすと幸村はすぐに立ち上がり、さっきより更に低い声で言い聞かせるように言った。


「すぐに薬師を呼んできてやっから。ちょっと待ってろ」


これ以上自分の事で振り回したくない、少しでも早く体を休めて欲しいと思った私は、部屋を出て行こうとする幸村に慌てて声をかける。



「あ、待って……」


「どうした?」


「もう大丈夫だから……」


「あ? 何言ってんだ。悪い病だったらどうすんだ」


「さっきより気分良くなったし、それに……」


「それになんだよ」


「それに……ここ数日幸村ずっと忙しかったでしょ? 今日ぐらいはゆっくりして欲しいの」


「人の心配ばっかしてんじゃねーよ! 
ほんっといい加減しろよろきっ!」



ーーそ、そんなに怒らなくていいでしょ……


出かかった言葉を飲み込み、どう言えば私の気持ちをわかって貰えるんだろうと思い悩む。



「わかったんなら大人しく俺の言う事聞いとけ!」


「ヤだ……」


「はぁぁぁぁああああ!?」



説得するのに上手い手段が見つからず、ただ拒むだけの私に身を乗り出し大きく目を見開く幸村に、居心地悪くなりふと視線を反らした。


その先には壁によりかかり腕を組んで私達のやり取りを眺める佐助君がいた。
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