第7章 天色(あまいろ)と亜麻色(あまいろ)
チュンチュン…チュチュン
小鳥のさえずりと障子に差し込む白々した光に眩しさで目が覚めた。
ミノムシみたいに包まる布団は暖かくこのまま自堕落的に寝ていたい願望にかられるけれど、そこは敢えて上半身を起こし思いっきり伸びをしてみる。
(くぅ~~~!やっぱり寒いっ)
日に日に寒さが厳しくなる反面、私の悪阻は少しずつ楽になってきていた。
手のひらでお腹をそっとさすりながら「おはよう」と話しかける。現代と違いエコーなんてないから全てに於いて赤ちゃんの姿形は私の妄想の下にある訳で。
男の子でも女の子でも絶対幸村にそっくりな可愛い子だと信じて止まない。
だって幸村と幸村に瓜二つの子と暮らせるなんて考えるだけで幸せで胸一杯になる。
「ちょっと寒いけど、少しお散歩しようか~」
更に語りかけつつ、厚目の上掛けをはおり縁側に続く障子を開けると、朝もやと共に露に濡れた青臭い新鮮な草の匂いが鼻を通して全身に駆け巡る。
大きく深呼吸して、踏み石に置いてある下駄を履き、霞みがかる庭園の先をふと見れば見慣れた枯茶色の羽織が目に映った。
「……あれは」
片手に水桶を持つその背中はすぐに霧中に消え入りそうで私は思わず声をかけた。