第3章 海原の煌めきをアナタと···
~ アサヒside ~
「そうか!それはおめでたい事じゃないか!」
オータ達から二人の婚姻を報告されてからまだ3ヶ月も経たないと言うのに。
まさかこんなにも早く、新しい報告を受けるとは思っていなかったな。
あの二人に、家族が増えるのか。
「それで、いまツムグさんは?」
久し振りに城を抜け出して店に顔を出してみれば、噂の本人の姿はない。
桜「あぁ、ツムグなら部屋で休んでます。それ特有の···アズサ曰く、母親になる為の最初の試練だそうです」
自分は妻を娶っていないからよく理解は出来ないが、オータとアズサさんがついているなら心配はなさそうだ。
ニ「あ~あ···ツーちゃんを取られたと思ってたら、トドメ刺されるとかついてねぇ」
「そう言うなニロ。あの二人はきっと、出会うべくして出会ったんだろう」
自分にもいつか、そんな出会いがあるのだろうかと考えながらオータの顔を見れば、オータは何も言わず静かに頷いていた。
梓「あら、いらっしゃい。って言いたいけれど、いいんですか?また抜け出してきたりして」
キッチンの奥から顔を出すアズサさんに苦い笑いを向けながら、たまにはね···と言えばクスリと笑って返されてしまう。
「ところで今オータから聞いたけど、ツムグさんの様子は?」
梓「大丈夫ですよ。これは避けては通れない症状です。私の時もそうだったし···それに今はツッキーが側から離れませんから」
そう言いながらもアズサさんは少し楽しそうに笑いを零した。
桜「アズサ、笑ったらダメだって。彼は彼なりに、一生懸命なんだから」
「それは?」
言葉に含まれた意図が掴めず聞き返せば、またアズサさんが笑った。
梓「だって。ツムグちゃんに僕がいるから大丈夫だ、とか言うわりにはオロオロしちゃってて。まだ産まれる訳でもないのに微笑ましいっていうか。だけど、随分変わったわ···ツッキーは。ここへ来たばかりの頃は、あまり人を寄せ付けない雰囲気だったのに」
月「誰が、どう変わったって?」
アズサさん達と談話していると、不意にドアが空いて当の本人が眉を寄せながら現れた。
梓「あら、誰だったかしら?ね、アサヒさん?」
「それをオレに振るのか」
身分も何もいらず、ごく何気ない会話が楽しめる場所は、やはり良いな。