第3章 海原の煌めきをアナタと···
~ オータside ~
「ツムグはどう?」
難しげな顔を見せるツッキーに聞けば、少し拗ねたように息を吐きながら横を向いてしまう。
月「部屋を···追い出された」
梓「···でしょうね」
「アズサ?」
ツッキーの言葉にクスクスと笑い出すアズサに、ダメだろ?という含みを持たせて呼べば、アズサは小さく肩をすくめてみせる。
梓「苦しんでる姿を見られたくないのよ、ツムグちゃんは」
月「なんで?あんなに苦しそうなのに」
梓「あんな体調の時はね、匂いに敏感だったり神経ピリピリしたりしてるの。人と話すだけでもダメだったり···あ、これは個人差あるけど」
そんな言葉を聞いて、そう言えばアズサもそういう時あったよな···なんて苦い事を思い出す。
俺も···大丈夫だから出てって!とか、部屋から追い出されたっけな。
梓「でもね、急に寂しくなったりして誰かにそばにいて欲しくなる時もあるの」
月「···わがまま」
ポツリと零すツッキーの言葉に、思わず笑ってしまうと···冷やかな視線を送られた。
「ごめんごめん、そう怒るなって。俺だってアズサに追い出された事あるから気持ちは分かるよ。アズサの時なんて、背中を押されて部屋から出された挙句に鍵まで閉められたからね」
梓「だってそれはオータが言うこと聞いてくれなかったから!」
「はいはい、そういう事にしておくよ」
もう!と頬を膨らませるアズサに笑いながら、そうだ···と冷蔵庫を開けて準備をする。
「ツッキー、これをツムグに持って行ってあげて?」
月「追い出されたのにこんなの持って行ったら、また僕が怒られるケド?」
トレーに乗せられた幾つかの物を見て、ツッキーははぁ···と息を吐いた。
「大丈夫だよ。アズサと同じかは分からないけど、きっとこういった物なら少しは口に出来るはずだから」
絞りたてのオレンジジュースや少し酸味のあるフルーツを見たアズサがニッコリと笑う。
梓「あぁ、それはいいかも?サッパリしてて栄養もあるし!ほら、ツッキー行ってらっしゃい?」
月「機嫌損ねたら、責任とってよね」
「了解。さ、ほら」
トレーを片手に持たせてドアを開けてやる。
渋々と部屋に向かう後ろ姿を見て、俺もあの頃は···あんな背中をしていたんだろうかと苦笑を浮かべた。