第3章 海原の煌めきをアナタと···
~ オータside ~
今頃ツキシマは、ちゃんとツムグに伝えられたんだろうか。
数日前にオレと2人で話がしたいって呼ばれて、ツムグと生涯を共に生きたいから許可を···なんて言われた時には驚いたけど。
いや、驚いたというより···一瞬だけ、脳内が白くなった。
あの日、セイジョーの船での2人を見て。
もしかしたら、いつかこういう日が来るんじゃないかと思ってはいたけど。
今日、ツキシマの腕の様子を見ている時に···今夜、伝えると聞かされた時は、愕然としてしまったよ。
赤ん坊の頃からずっとそばにいたツムグが、遂に俺達から巣立ってしまうのかと思うと、少し···寂しいとさえ思えた。
はしゃぎ疲れて眠ってしまったリンネをアズサに託し、今夜与えられた部屋のバルコニーへと出る。
濃紺の空の中で輝く月を見上げて、こんな夜はいつも···2人で遅くまで起きていたなと思いを馳せる。
ケイタ···お前はいまどこにいるんだ。
帰れる手立てがあるなら、早く···帰って来いよ。
お前が知らない話は山のようにあるんだ。
帰れる場所は、ちゃんとあるから。
ケイタの部屋は、毎日アズサが掃除してくれてる。
いつ帰って来ても、不自由しないようにって。
お前が帰って来れるように、あの店もずっと続けてる。
あの日の事で街のみんなには俺達の素性がバレてしまったけど、でも。
みんな前と変わらずに、俺達と接してくれてるんだ。
いい街だよ、ここは。
梓「オータ···また月を眺めてるの?」
「···まぁね」
梓「ツッキーは、あの子にちゃんと伝えられたかしら」
「そうだといいね。ツムグは鈍感だからなぁ」
ため息混じりに言えば、アズサも本当···と言って笑う。
梓「見てる私が、もどかしくてウズウズしちゃう」
「でも、きっと大丈夫だろ···あの2人なら」
梓「そうね。きっかけはどうであれ、一番を見つけられた2人だもの。一瞬で惹かれ合うなんて、前例あるし?」
「な···どうだか?」
梓「あら?違うの?」
ねぇねぇ?と繰り返すアズサの肩を抱き、敵わないなと笑って見せる。
「確かに···違わないよ」
ポツリそう呟けば、ほらね?とアズサは笑う。
「うるさいよ、アズサ」
梓「はいはい、静かにしてます」
やっぱり、敵わない。