第3章 海原の煌めきをアナタと···
ツキシマさんからの突然の言葉に、私の脳内変換が追いつかず···思わず黙り込む。
月「···なに?」
『なに?って···えっと、今のがよく···理解出来なくて、もう一度···言って貰えたら、とか···?』
動揺のあまり、しどろもどろになりながらも言えば、ツキシマさんは穏やかに微笑んで私を見つめた。
月「何度だって言うよ。今度は落ち着いて、よく聞いて?あぁ、そうだ、ちゃんと聞こえるように···こっちに来たら?」
自分の隣の椅子を指し示し、私に隣に来て座れば?と促す。
キィ···と音を立てながらカウンタードアから出て行けば、ツキシマさんは一度立ち上がり、その椅子を引いて私をゆっくりと座らせた。
月「ゆっくり言うから、ちゃんと理解して?」
その言葉に、私はゆっくりと頷いた。
月「どうして本当の名前を教えたのか。それは、キミが同じツキシマになったら···呼びにくいだろ?···そう言ったんだよ」
私が、ツキシマさんと···同じツキシマさん、に?
···何だかまだ、ややこしい。
『あの、同じツキシマさんに···って···』
月「まだ理解出来ない?じゃあ、ポチにもよーく分かるようにハッキリ言うから···もし、嫌じゃなかったら···だけど。僕と同じツキシマになって欲しいと思う。もっとわかり易く言えば、オータさんの側にいつも寄り添っている···アズサさんのように、ね」
オータ兄様といつも一緒にいる、アズサ···ちゃんと同じ···
『ツキシマさん···それって、もしかして?』
月「もしかしなくても、ひとつしかないだろ?」
ひとつしか、ない···
そう、だよね?
『それって、本当に?』
熱くなる目頭と、ツンと痛む鼻の奥に逆らうこともせず、これは夢じゃないんだと···あらゆる思いで確認する。
遠くなりつつある、あの日。
私の身勝手でセイジョーの船に着いて行き···見張り役を命じられたツキシマとの共同生活が始まって。
最初こそは、なんて愛想のない···冷たい人なんだと思っていて。
だけとそれも、日を追う事に違うんだって分かって。
もし···もしも元の場所に帰れないのであれば、ツキシマさんの側に居たいとさえ···思い始めていて。
そして、あの···運命の日が来て。
大切にしたいと思う人の命を手繰り寄せる代わりに、大切な人が···