第3章 海原の煌めきをアナタと···
ただ、ひとつ思うのは。
ここにいる僕が、気が付けば誰かの温もりを探している···ということ。
きっとこの人は、そんな僕を見て···寂しがり屋だと言うのだろう。
そんなの、寂しがり屋とは言わないだろ。
違うし。
···絶対違うのに。
桜「どう?この辺の感覚とか、分かる?」
オータさんが僕の腕を丁寧に揉みほぐしながら顔色を見る。
「誰かに触れられてるという感覚は、ある···けど。自分で動かそうとしても、それは出来ない」
桜「そうか···ごめんね」
「なんで謝るんです?悪いのは···僕なのに」
桜「そうじゃないだろ?今は、お前も大事な俺達の家族だ。タダシも、ニシノヤも、コガネも···みんないろんな過去を背負ってる。その背負ってる物を、俺も一緒に背負う覚悟をしてるから、みんなここにいる」
「でも僕は、」
桜「例外は認めません」
フッと笑いながら僕にそれ以上ネガティブな事を言わせないオータさんには、いつも勝てない。
みんなの背負う過去を一緒に背負う覚悟。
それがどれだけ重く伸し掛る物なのかは、僕にだってわかる。
だからこそ、あの賑やかな3人はオータさんに忠誠を尽くしているのだろうとも。
それに、タダシは···いまも消息不明なままの、本来ここにいるべき人物にオータさんへの忠誠と同じくらいの思いを馳せている。
暇さえあれば、あの海辺に足を向けて遠くを見ている姿を何度も見た。
それは、オータさんも同じだけど。
オータさんは僕達に、そういう姿は見せないようにしてるけど。
もうひとつ···僕は、知ってる。
月夜の晩にお酒を注いだグラスを2つ、テーブルに置いて飲んでること。
ひとつはオータさんが。
そしてもうひとつは、向かい側に置くだけ。
初めは何をしてるのか分からなくて、変わった人だと思ってたけど。
ツムグにそれとなく聞けば···月の明るい夜は、そうやって酌み交わしてたんだって教えてくれた。
きっとあの日にいなくなってしまった人を、そこに留まらせているんだ。
生きてるかどうかさえ分からない。
あの人の事を···