第3章 海原の煌めきをアナタと···
ツキシマさんは元々が悪名高いセイジョーの乗組員だからと、今夜のお祝いパーティには席を作らなくていいって言って。
あの時の傷の影響で、片腕が少し不自由なツキシマさんをひとり残すのは忍びないからと、私も残って家で待つことにした。
『リンネちゃんも、大きくなったよね···』
月「ならないと困るでしょ」
『もう!可愛くない答え!』
月「僕が可愛い答え方して、なにか楽しい?」
これだもんなぁ、ホント。
『そう言えばさ、リンネちゃんの名前の由来って知ってた?』
月「いや?だけどオータさんの事だから、きっとなにか大事な意味があるんだろうとは、思う」
オータ兄様からの大事な、意味。
『あるよ。それはね···』
名前が決まったって言うオータ兄様がアズサちゃんの所に来て、そっと紙に名前を書いた。
“ リンネ ”
たまたま居合わせた私が、どんな意味があるの?と聞いたら。
オータ兄様はそっと赤ちゃんの頭を撫でてから、赤ちゃんを抱くアズサちゃんの肩を引き寄せた。
桜「遠い遠い国の言葉で、生まれ変わっても必ず巡り会える···って。だから、リンネ。俺達は何度新しい命に生まれ変わっても、アズサと···この子に巡り会えるように」
それを聞いたアズサちゃんが、とても幸せうに微笑みながら涙を浮かべたのを今でも鮮明に覚えてる。
『ね?凄く素敵な名前だと思わない?』
月「輪廻転生、か」
『何度生まれ変わっても巡り会えるなんて、本当に···素敵』
月「そうだね。じゃあ···僕達の子供には、それに負けないくらいの名前を考えないと、だね?」
『···えっ?』
いま、なんて言ったの?
私の聞き間違いじゃなかったら、それって···
思いがけない言葉に瞬きを忘れるほどの衝撃を受けながらツキシマさんを見上げた。
月「···なに?そんなに目を見開かれると、怖いんだけど」
『だっていま···なんて、言ったの?』
月「は?」
『え、えと···よく聞こえなかった、なぁ···なんて』
聞こえなかったんじゃない。
突然の爆弾発言過ぎて、もう一度···ちゃんと聞きたいんだ。
『ね···もう一回、言ってくれる?』
月「じゃあ···」
『じゃあ?』
月「今夜、僕の部屋で聞かせてあげるよ」
ツキシマさんは意地悪に笑って、私の頬を撫でた。