第3章 海原の煌めきをアナタと···
あの激動の一日から少し経って、私達の元に新しい命がやって来た。
あの日、傷だらけのみんなを見てもアズサちゃんは何も言わず···ただ、ひとりひとりを強く抱き締めてくれた。
たったひとり、そこにいるはずの人間以外を。
アサヒ様は相変わらずで、ヒマを見つけてはニロさんをお供にお店に顔を出してはダイチ様に探し出されて怒られて。
城下のお花屋さんだと思っていたチカラさんも、港町の魚屋さんだと思っていたスガさんも···スルッと元の生活に戻り、毎日店先を賑わせていた。
特にスガさんは、正体バレてるのにも関わらず私を見つけては···
菅「ツムグちゃ~ん、ひ・と・り?だったらさぁ、店番退屈だから奥でお茶して行かない?オレと甘い時間を楽しもうよ?ね?」
···こんな感じで。
だけど、それも今までと違うのは。
月「ちょっと。イチイチ絡むの、やめてくれない?」
菅「うわ···出た」
月「はぁ?なんなの、そのバケモノでも見たみたいなリアクション」
菅「あのなぁ!死にかけのお前を手厚く看病したこと忘れたのか?」
月「悪いけど、僕を生かしてくれたのはオータさんだから」
···また始まった。
瀕死のツキシマさんを見て、アサヒ様が優秀なお医者様を付けてくれて。
オータ兄様と2人で、こんなに悪態付けるまでに回復に導いてくれた。
それ以来、ツキシマさんはオータ兄様の言いつけは必ずと言ってもいいほど守り、今日も買い出しに出る私のお供をしてくれている。
『あ~もう、ほらほら!遅くなったらオータ兄様に叱られるから!スガさん、また今度美味しいお魚買いにきまーす!ね?』
菅「オッケー!いいのが入ったら、オレがツインズまで届けちゃうよ!」
月「来なくていいから」
菅「いちいちうるさいぞツキシマ!···あ、それよりさ?今夜のお祝いパーティには、飛びっきりのヤツを献上してるから楽しみにしててってオータさんに伝えてよ」
『分かりました。ちゃーんと伝えますね?』
今夜のお祝いパーティは。
オータ兄様とアズサちゃんの子供が、もうすぐ初めての誕生日で、これから先ずっと食べるのに困らないようにっていう遠い島国のしきたりがあって。
それを知ったアサヒ様が、ぜひみんなで祝おうじゃないかと会を用意して下さった。
私もツキシマさんも招待されてはいるのだけれど。