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【ハイキュー!!】海原の煌めきをアナタと

第2章 風のざわめき


慧「タダシ!!」

山「ツムグさん!!」

それは一瞬の事で、自分の名前が叫ばれた事に振り返ると同時に、目の前にはタダシ君の背中が迫っていた。

山「クッ···ツムグさんには、指一本触れさせない!!」

ギリギリのところで競り合う二人を前に、足が動かない。

縁「こっちが済んだら加勢する!それまで耐えてくれ!」

瀕死のツキシマさんを下の船へと下ろしてくれているチカラさんが叫ぶ。

オータ兄様はツキシマさんを自分の体に縛り付け、下に下ろされた縄梯子をロープ伝いに降りている。

岩「退け!···退かないのなら、斬···グッ···またキサマか!!」

山「ケイタさん!!」

ジリジリと押されるタダシ君の腕が止まり、代わりにケイタ兄様が間に入り込んで来た。

慧「お前の相手は、このオレだ」

岩「···死に損ないが!」

慧「そりゃお互い様だ」

ニヤリと笑うケイタ兄様の向かいで、イワイズミさんの眉間に深いミゾが刻まれる。

微妙なバランスで睨み合う姿を、私はただ傍観しているしか出来ないのか···と、悔やんだ瞬間。

グラリと大きく船が傾いた。

『なに?!』

岩「どうやら上手く作動したようだな」

目線を動かすことなく言うイワイズミさんに、ケイタ兄様の目が揺らぐ。

慧「お前···いったい何を···」

岩「諸共、だ」

繋「なっ···それがお前の決断か?!」

ケイタ兄様が声を荒げると、イワイズミさんはただ口端で笑った。

少しずつ傾きが大きくなる船に、足元が振らつく。

『ケイタ兄様···』

慧「タダシ···チカラの作業が終わったら、お前はツムグを抱えて海に降りろ」

山「はい!···でも、ケイタさんは···?」

慧「オレはお前らが無事にオータの所に辿り着いてからだ。それまで持ち堪えるオレサマの精神力に感謝しろよ?」

いつもと変わらないケイタ兄様の、ちょっとおどけるような顔が···どうしてかいまは不自然に感じる。

『ケイタ兄様···?』

不安に煽られ小さく名前を呼べば、ケイタ兄様は···心配いらねぇよ、と返した。

慧「急げタダシ!この船はじきに沈む···ツムグを守りきれよ?信じてるぜ、オレの一番弟子」

ケイタ兄様の言葉にタダシ君が黙って頷いて、私を抱えて海を覗いた。

慧「行けタダシ!頼んだぞ!!」





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