第2章 風のざわめき

～ オータside ～

西｢オータさん！言われた準備はコガネとやりました！｣

セイジョーの船からツキシマを下ろすと、待機していたニシノヤが駆け寄って来た。

月｢僕、なんか···ほっとけばいいのに｣

｢言っただろ？君は生きる覚悟をしろって｣

西｢え···じゃあ···？｣

その言葉の意味を理解したニシノヤが、目を丸くして俺を見上げ···それに黙って頷いて見せた。

西｢···っか。そっか！じゃあお前は今日から仲間だ！ぜってぇ助ける！｣

月｢ちょっと···痛い、んだけど｣

｢ニシノヤ···それじゃ助かるものも助からなくなるから｣

勢いに任せてバシバシと叩くニシノヤを止めて、ツキシマを···とりあえず安静に出来る場所へと横にした。

｢あとは、残りのメンバーを、｣

黄｢オータさん···あれ！｣

縁｢船が···沈んで行く···｣

コガネが顔色を悪くしてセイジョーの船を指さし、俺に見ろと言う。

｢あれはいったい？！｣

コガネに言われるままに振り返れば、さっきまで安定していた筈の船が大きく傾いている。

｢ツムグ！！｣

ケガ人を優先にして欲しいというツムグの申し入れを受けて、俺が先に船から降りたが···まさかこんなことになるなんて···

いや、まて···慌てても仕方ない。

まだ向こうの船にはケイタとタダシがいる。

逆光に目を細めて目上げれば、その先にはツムグを抱き上げたタダシの姿が見えた。

慧｢行けタダシ！頼んだぞ！！｣

｢タダシ！！待つんだ！！｣

ケイタの言葉に被せて叫んでも届かず、タダシはツムグと一緒に海へと飛び込んでしまった。

｢コガネ！ニシノヤ！ロープを持って来い！早く！！｣

飛び込んでからまだ浮上して来ない二人。

ケイタ···お前はなんて無茶な事をタダシにさせるんだ。

黄｢オータさん！ロープです！｣

コガネからそれを受け取り、波間に目を凝らす。

まだ···上がって来ない。

どこだ···？

タダシ···ツムグ···！！

揺らめく水面をいくら探しても見つける事が出来ずに焦りが生まれてくる。

西｢いました！オータさん！！波に流されてる！｣

｢タダシ！ロープに捕まれ！！｣

ニシノヤの声に二人を確認し、ロープを投げるとタダシは波に遊ばれながらもその先端を掴んだ。