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【ハイキュー!!】海原の煌めきをアナタと

第2章 風のざわめき


腕を伸ばすと、さっき受けた傷が痛み顔を顰めてしまう。

だけど、痛いなんて···言っていられない。

すぐ側には、もう···痛いなんて言えなくなってしまった人がいるんだから。

掠めただけで、焼けるように痺れた痛みが走った。

撃たれたとなれば···それとは比べ物にならないほど、痛かっただろうと思う。

苦しかっただろうと、思う。

なのにツキシマさんは、痛いとも、苦しいとも言わずに。

何も言わずに···言えずに···黙って···ひとりで···

ギュッと目を閉じて、トリガーに掛けた指先に力を入れた。



慧「オータ!!」

乾いた音に続いてケイタ兄様が叫ぶ。

桜「ケイタ?!」

弾かれたように振り返ったオータ兄様に、ケイタ兄様が自分の剣を鞘ごと投げた。

慧「特別枠で···貸してやる」

ニヤリと笑うのを見て、オータ兄様もすぐに返してやるよと笑う。

桜「さぁ···これで同等の立場だ」

及「傷だらけのクセに?」

桜「これくらいのハンデがあった方が、ちょうどいいんじゃないのか?」

オータ兄様の言葉に、オイカワさんが表情を険しく変える。

及「随分とオレは···ナメられてるようだね。じゃあ···こっちも本気で行くから」

桜「どうぞ?···さっき以上の本気ってヤツがあるなら、ね」

微かに聞こえる二人の会話。

どちらも真剣で。

誰も邪魔は出来ない。

でも···ごめんなさいオータ兄様···





私はもう、大切なものを···失いたくはない···





二人が動き出したら、どちらに当たるか分からない。

だったら···いま、このままの状態で終わりにしたい。




傷の痛みで渋り出す腕を真っ直ぐ前に伸ばし目を閉じて、過去の記憶のケイタ兄様の言葉を思い出す。

慧 ー いいかツムグ。腕の力だけを頼るな、体の芯で全てを支えろ。左手は添えるだけでいい、力み過ぎるとブレるからな ー

はい···ケイタ兄様。

慧 ー 標的を捕らえたら、あとは迷わず引き金を引くんだ。迷うくらいなら、お前にソレを使う必要はねぇ ー

はい···ケイタ兄様···



閉じた目を開け、前を見据える。

大丈夫···私なら出来る。

私にしか···出来ない。




迷わない!









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