第2章 風のざわめき
~ ケイタside ~
誰かの叫びに、ハッと目が覚める。
今の声は···ツムグ?!
「ウッ···」
体を起こそうとしても、上手く力が入らねぇ。
黄「ケイタさん?!良かったオレ、てっきりケイタさんが死んだのかと思って」
目を潤ませたコガネが、グイッと腕で顔を拭った。
「オイオイ、勝手に殺してんじゃねぇよ。それよりコガネ、ちょっと手ェ貸せや」
縁「むやみに動かないで下さい。ホントに死にますよ?」
手を出そうとしたコガネの前にチカラがスっと割り込み、眉を寄せながらオレを見る。
「大丈夫だ。オレにはまだ、やり残した用事があんだよ。それが終わるまでは、意地でも死なねぇから」
無理やりチカラを押し退け、コガネの腕を掴み起き上がる。
それよりツムグだ。
その方向を見ればタダシがツムグを抱き寄せ、その傍らには···
「そういう···事か」
さっきまで何もなかったハズのあの金髪の男の頭に、恐らくタダシの上着が被せられている。
マジで···逝っちまったのか。
胸のポケットから小さな紙切れを取り出し、その走り書きの文字を指で辿る。
ー この娘は必ず僕が帰す。何が起きても、命懸けで守る。
ツキシマ ー
ホントに命···懸けやがって。
オレより、カッコイイ事すんなっての。
黄「ケイタさん、その紙切れはなんですか?」
横から顔を覗かせるコガネが、その文字を見て首を傾げた。
「あぁ、こりゃあな···ツムグを抱えて逃げたあの男が、隙をついてオレに渡して来たラブレターだ」
黄「ラブ···まさかケイタさん、そっちの気が···?!」
「アホか!オレは正真正銘イイオンナ専門なんだよ!···痛てて···傷に響くからアホなこと言うんじゃねぇ」
そうだ、オータはどうなって···っと、マジか。
あのオータに傷を負わせ、更にオータは丸腰···
あのオイカワってヤツ、なかなかの手練だな。
桜「お前に···後悔という言葉を教えてやるよ」
あらら~?
あの男···オータを本気で怒らせやがったな?
大人しいヤツが怒ると怖いって世論、アイツは知らねぇのか?
だが、しかし。
いずれにしてもオータは手ぶら状態だ。
いくらなんでも形勢が悪いな···仕方ねぇ、指令も出てるコトだし?
ちょっと、手助けしてやるか···