第2章 風のざわめき
~ オータside ~
コガネがケイタを呼ぶ叫びに、チラリと目をやった。
まさか、ケイタが?!
そう一瞬気を離した瞬間に、チリッとした痛みが腕を襲う。
やられたな。
及「なに余所見してんのさ?遊びの時間は終わりじゃなかったのかい?」
「あぁ、そうさ。子供の遊びは終わりだ」
時間が···ない。
ケイタのあの出血は、異常だった。
それにツムグの所にいるあの男も、油断ならない状態だ。
早く、ケリをつけなければ。
···どんな手を使ってでも。
ポケットから俺達の中での合図としている色のスカーフを取り出し、相手にさもいま受けた傷に巻き付けるかのように見せながら、腕に巻いていく。
誰でもいい。
この指令に気が付いてくれた人が、それを成してくれるなら。
及「なに?オレがつけた傷が痛むのかい?」
冷たく笑いながら、オイカワが更に剣を交えてくる。
「さぁね。どう解釈してくれても構わないよ」
この意味に、気が付かないでいてくれるなら、ね。
サッと周りを見れば、チカラやコガネはケイタの元に。
タダシは変わらず···ツムグ達の所にいる。
ただ、さっきと違うのは。
ツキシマという男に向かい合って座り、何かを話しているツムグの後ろ姿。
及「ちょっと、まだよそ見する余裕があるわけ?」
「···クッ!」
キーンと響く金属音と、その重さに体を引いて備える。
さっきの···まるで様子を見ているようだった。
状態が悪化したのか?
だったら尚更早く···
『···いやぁぁぁぁぁぁぁ!!!』
ツムグ?!
悲痛な叫びに思わず振り返る。
及「どこを見てんだ、よ!!」
···?!
しまった!!
その一瞬で弾かれた剣が宙を舞って遠くに流れていく。
それと同時に伴う、新たな痛み。
···利き腕をやられたか。
俺とした事が、油断したな。
及「あ~らら、痛そうだねぇ。でも心配いらないよ···すぐ、楽にしてあげるからさ?」
滲み出る血を押さえながら、またツムグの方を見ると、タダシが上着をツキシマという男の頭に掛けていた。
まさか間に合わなかったのか?!
及「どうやらツキシマは、逝ったようだね」
悪びれもせず言うオイカワに、怒りを隠せなくなる。
「お前に···後悔という言葉を教えてやるよ」