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【ハイキュー!!】海原の煌めきをアナタと

第2章 風のざわめき


月「泣くな···って、言ってるのに」

少しだけ眉を寄せながら、ツキシマさんが小さく笑う。

それはとても穏やかで。

暖かくて。

今までみたいな、からかうような笑いではなかった。

頬に置かれたツキシマさんの手に重ねた自分の手が、少しずつ熱を帯びていく。

どうしてこんなに、この手を離したくはないんだろう。

どうしてこんなに、胸が痛むんだろう。

どうしてこんなに···そばに居たいと思うんだろう。

ほんの数日間だけ、同じ時間を共有しただけなのに。

兄様達の所へ帰りたいと思うのと同じくらい···そばに居たいと思えるのは。

···なぜ、なんだろう。

今は遠くどこかの国へいる父にも。

父に着いて行った母にも。

オータ兄様や、ケイタ兄様にも。

いつも愛されてると感じながら今日まで生きてきた。

なのに。

それとは違う、誰かに愛されたいと···思ってしまう。

誰かを愛して生きたい、と···思ってしまう。

そしてその誰かとは···





決して望んではいけないだろう、人。




声を出せば、すぐ届く距離にいるのに。

手を伸ばせば、すぐ届く所にいるのに。

心はきっと、どんなに足掻いても届かないかも知れない。

もしこれが、これから先の生涯···幾度となく巡り合わされる気持ちだとしたら。




これが最後の“愛”でいい。




だから···

もし本当に神と呼ばれるものがいるならば。





どうかこの人を、連れて行かないで下さい。




月「ほら···最後のひとつだよ?だから、もう泣くな」

ツキシマさんがポケットから小さな包みを取り出し、震える指先で薄紅色のコンペイトウをつまむ。

月「泣き止まない子供には、お菓子···だろ?」

『私そんなに、子供じゃない···最後のひとつなら、ツキシマさんが食べて?』

差し出された指先に手を添えて、そのまま口元へと運ぶ。

月「子供じゃない、か。じゃ···遠慮なく」

コンペイトウを口に入れたツキシマさんが、自然な流れで私の頭を引き寄せた。

『ん···?!』

月「なんて顔、してるのさ。子供じゃ、ないんだろ?」

いつものように、ツキシマさんが笑いを見せる。

『初めて、だったのに···』

月「それは···ごちそうさまデシタ」




初めての口付けは···血の味がした···

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