第2章 風のざわめき
~ ケイタside ~
マズイな視界が霞んで来やがった···
それは多分、この出血のせいなんだろうケドよ。
体をキツく締めた布の端からポタリと床に落ちる赤いシミを見て、思わず足で揉み消す。
長くは持たねぇかもな。
縁「ケイタさん傷を見せて下さい」
こっちに歩いて来たチカラが眉を寄せながらオレを見る。
「どうって事ねぇ」
縁「隠しても無駄です。その出血量を見ればオレじゃなくても、容易に気が付きますよ」
···だろうな。
「バレねぇと思ってた、のに···」
黄「ケイタさん?!」
グラリと傾く景色に、慌ててコガネの腕を掴む。
「危ねぇな···風穴ひとつ空いてるだけなのに、オレもそろそろ年寄りの仲間入りか?」
肩で息をしながらも、コガネに手を借りながら床に腰を下ろした。
縁「風穴って···コガネ、説明してくれ」
真剣な顔のチカラに負けたのか、コガネがあっさりとここまでの事を吐いた。
縁「···ケイタさん、コガネと一緒に今すぐニシノヤの所へ戻って下さい。オレも行きますから、そこで、」
「いや、それはダメだ···ここで最後まで、やる事があんだよ」
ほら見ろ、チカラが大声を出すからツムグ達までコッチを見てるじゃねぇか···
向こうはタダシがついてるから、大丈夫、だな···
乾いた笑いを漏らしながら、歪む景色にジッと焦点を合わせると、柱の影から3人を狙う人影が見えた。
「タダシ!!2時の方向!」
オレの声にハッとしてタダシが振り返り、襲い掛かるヤツの剣を受ける。
何度も何度も剣を返し···タダシはその場を収める。
やるじゃねぇか、タダシ。
お前はもう、お荷物でも、弱くもねぇよ···
オレの大事な一番弟子、だからな。
縁「コガネ、オレはニシノヤに状況を伝える。その間、頼めるか?」
黄「ッス!!例え指一本でも、ケイタさんには触れさせねぇッス!!」
薄くなる視界の中で、チカラが側を離れるのが分かる。
クソっ···こんな時に、何も出来ねぇなんてな···
重くなる瞼に抵抗する力もなく、そっと目を閉じる。
オータ悪いな···ちょっとだけ、寝かせてくれ。
ちょっと休んだら、すぐ···加勢、して···やるから。
黄「ケイタ、さん?···ケイタさーーーん!!!」
うるせぇコガネ···
少し···眠るだけ、だ。