第2章 風のざわめき
~ ニシノヤside ~
向こうはいま、どうなってるってんだ?
オータさんはオレとチカラに、こっちの船に残っていざと言う時の為に小舟を下ろしておけって言ってたけど。
そのチカラでさえ、何かを感じて向こうの船に上がって行っちまった。
チカラは、何かあったら合図を送る···とか言って、サラリとメモを書いてオレに手渡してきたけど。
カサリと音を立てながら、その紙を開いてみる。
当方に軽度の負傷者が出た場合···黄色
当方に重度の負傷者が出た場合···赤色
死者が出た場合···黒
何だかよくわかんねぇけど、チカラは上からオレに布キレを垂らすって言ってたな。
まだ···何も落ちて来ない辺り、みんな無事なんだろうか。
それとも、その案を出したチカラが既に···
いや、それはないだろう。
アイツはアサヒ様に使える臣下だ。
それなりに頭もキレるし腕もある。
常に冷静で、オータさんとオレらがわかんねぇような難しい話が出来るヤツだから、誰より先にケガするようなヤツじゃねぇな。
縁「ニシノヤ!!」
高い船の上から名前を呼ばれ、空を仰ぐ。
チカラ···?
オレが上を向いたのを確認して、チカラが動く。
ヒラリ···舞い降りてきた布の色は。
···黄色。
風に煽られながら宙を舞う布キレを掴み取り、そこに書いてある文字を見る。
タダシ、ツムグさん···だと?!
タダシは戦ってケガしたんだと考えても、ツムグがケガしてるって···どういう事だ?!
それをチカラに聞こうと、また上を向く。
···もう一枚?
その色は···赤と黒の布か結び付けられていて。
赤···と、黒···握りしめた紙を開き目を走らせると、赤は重度···黒は···死者···
慌てて舞い落ちる布キレに手を伸ばし、文字を見る。
赤い布に···ケイタさん、メガネの男?
ウチの乗組員にメガネの男はいない。
どういう事だ?
···そういえばあの時タダシが!!
ツムグを連れて行った男の風貌で、金髪でメガネとか言ってたな!
···敵に死にかけてるヤツがいるのは、オレらに関係あんのか?!
いや、オータさんの事だ。
誰一人として死なせない···そういう事なんだろう。
しかし、ケイタさんが瀕死の重傷ってヤバくねぇか?!
あのケイタさんが···