第2章 風のざわめき
~ ケイタside ~
コガネを連れて数歩進んだところで銃声が聞こえた。
黄「ケイタさん、いまの?!」
「あぁ、間違いないだろうな」
いったい甲板で、何が起きてるってんだ?!
こっちはケリがついてる。
だったら今は、少しでも早く先を急がねぇと!
「コガネ!急ぐぞ!!」
切られた傷の痛みを遠くへ放り、コガネに声を掛けながら走り出そうと体を起こした、が···
黄「ケイタさん!!」
間近でも乾いた音が響き、同時に痛みが走り腰を折る。
クソッ···あの坊や、あんなモンまで隠し持ってやがったのか···
息が止まりそうな痛みを感じながら振り返れば、銃口を向けたままオレ達を見るヤツが小さく笑っていた。
岩「アンタが言ったんだろ···戦い方は、ひとつじゃ、ねぇ···って、よ···」
「そうだったな···」
岩「へっ···ざまぁ···」
そう返したところで、カタンと銃を落とし坊やは床に伏せた。
やられたな、コイツに。
全く、健康一番で丈夫が自慢のオレに···風穴ひとつ開けてくれやがって。
喉の奥に込み上げてくる鉄サビのような味を無理やり飲み込み、大きく息を吐く。
まだ···ダメだ。
ツムグを連れ戻して···それから。
それから、アイツをアズサの元に帰さねぇと···な。
神さんよ···もうちょい、待ってくれ。
そんなに慌てなくったって、イイだろ?
全てが片付いたら···ちゃんとそっちに。
大人しく···逝ってやっから。
だから。
だから、あと少しだけ···オレに時間をくれよ。
黄「ケイタさん···」
「コガネ。アイツらに余計な事を言うんじゃねぇぞ」
黄「でもそのケガじゃ!」
「いいから!!···いいから黙っとけ。それから、そこの部屋開けてなんか押さえるモノ持って来い。ガッチリ風穴押さえ込んだら、オータ達のところに急ぐぞ」
何か言いたそうなコガネを勢いで黙らせ、目だけで早く行けと促す。
弾は貫通してるが、少しくらい···何とかなる。
いや、持ち堪えてみせる。
オータ、ツムグ···すぐ合流するからな?
オレは結構、悪運強いんだぜ?
お前らには、負けねぇくらい···な。
だから、待ってろ···