第2章 風のざわめき
~ オイカワside ~
「さぁ···どうする?その娘をこっちに渡すか、それともそのまま起きて破りとして、逝くか。オイカワさん優しいから、選ばせてあげちゃう···ただし、気は長い方じゃないから、ゆっくり考えてる暇はないよ」
オレに撃たれた場所を押さえながら、痛みに耐える···その表情。
オレはゾクゾクするよ。
だいたい、前から気に入らなかったんだよツキシマは。
イワちゃんの言うことはスグ聞くくせに、オレにはさり気なく反発してくれちゃって。
それに、どうにか隠そうとしてるけど···オレは気付いちゃってるからね、ツキシマ。
お前、その娘に情が移ったんだろ?
イワちゃんに言われて嫌々ながらも同じ部屋で生活して、話し相手はお互いだけ。
そうなると、情が移っても仕方はない。
けどね、ツキシマ。
そんな生温い情なんて、捨てちゃえよ。
海を渡り歩くオレ達には、そんな感情···必要ないんだから、さ?
その時、その日、その晩限りの。
そんな薄っぺらな···何もない感情だけで充分だろ?
「さぁ、答えは出たかな?」
月「···断る、と言ったら?」
ツキシマの放つ言葉に、躊躇いもなく引金を引く。
月「グッ···」
『お願いやめて!!』
「痛い?苦しい?···でもそれはお前が悪いんだよ、ツキシマ。それでも反抗するって言うなら、仕方ないね···短い付き合いだったけど、バイバ···」
ツキシマの最後を飾ろうと銃口を向ければ、攫った小娘がツキシマを庇うように前に立った。
「何の、つもりかな?」
桜「ツムグ やめろ!!」
『やめない!絶対ここを退かない!だって···こんなの違う···絶対間違ってるもん!』
へぇ···これは驚いた。
まさか、この娘も···?
月「ポチ···お前、バカ、デショ···僕を捨てて行けば···帰れたのに」
『バカでもいい。誰かを犠牲にして帰っても意味なんかない、後悔だけが残るから。それならいっそ、全てを見届けたい』
ふぅ~ん···
自己犠牲のつもり?
そんなの、聞かされるだけでイライラする。
『オータ兄様、早くツキシマさんを診てあげて!至近距離で2回も、』
「おっと!勝手な事されたら困るんだけど?」
『オータ兄様!お願い早く!』
銃口を向けられたまま強気だねぇ。