第2章 風のざわめき
~ コガネガワside ~
オレは、どうしたらいいんだ···
オータさんには、ケイタさんの側に付けと言われ。
そのケイタさんには···来るなと言われ。
そして目の前には、傷を負って流血するケイタさんが···まだ、剣を交えている。
慧「なかなかやるじゃねぇか、坊や」
岩「···そっちこそ、息が上がってんぞ年増!」
慧「年増···あのねぇ、何回言えば分かるんだ坊や?オレはお兄さんだって···言ってんだろ!」
今のところ、形勢は···五分だ。
初めの方こそケイタさんがかなりの優勢だったが、繰り返される剣技の中でそれも五分になってしまった。
それというのも、さっきの傷からの出血量と···長引く戦いのせいだ。
ケイタさんのシャツは、もはや半分が赤く染まっていると言ってもおかしくはねぇ。
···それだけ、あの傷は深く厄介な場所にあるってことだ。
慧「はぁ···やっぱり坊やの言うようにオレは年増なのか?ちっとばかり、お疲れモードよ、オレ様···そろそろお終いにするかね?」
岩「望むところだ!!」
壁に手を付き息を整えるケイタさんが、剣を握り方を変えた。
あの構えは!!
ケイタさんの姿を見て、オレは邪魔にならないように数歩下がる。
あれは···過去にあまり見たことがない。
ケイタさんが、ここぞという時に使う···それだ。
慧「···勝負!」
声を張り上げながらケイタさんが先に仕掛ける。
岩「クッ!」
でも相手も引けを取らねぇ?!
甲高い音を合わせ鳴らしながら、右に左にお互いが揺さぶりを掛ける。
···?!
ケイタさんが剣を弾き、相手に隙が出来た!
慧「貰ったァ!」
岩「ふざけん···な···?!」
···終わった。
慧「···悪ぃな、坊や。ちと反則技だが···戦い方は、ひとつじゃねぇんだよ」
岩「汚ねぇ···やり方、だな···」
ケイタさんに仕掛けられた場所を見て、相手が苦しそうな呼吸で言葉を零す。
慧「優しいお兄さん過ぎて忘れたのか?一応オレは···坊やと同じ、海賊だぜ?···元、だけどな。っと、そのナイフ抜くなよ?急所は外してあるが抜いたら大出血するぞ。絶対、抜くんじゃねぇ。わかったな」
そのまま壁に体を預けながら、足元から崩れて行くのを見てケイタさんはオレに、行こう、と声をかけた。